深刻な大気汚染でスモッグの都として有名になってしまった北京ですが、北京の一般的な市民の足として、バス、地下鉄、そしてタクシーというのが一般的になっています。日本の都市部などとちがって、郊外からの在来線と地下鉄の乗り入れなどがなく、加えて生活圏と地下鉄駅の距離が微妙なこともあり、地下鉄の駅にアクセスするためにバスを乗らないといけないことも多くあります。

北京のバスは、基本的に構造が古いためか、またはメンテナンスがしっかりできていないためか、よく道ばたで故障したり、大型レッカー車で回送されていくシーンを良く目にします。また、ニュースなどでもご覧になった方も多いかと思いますが、毎年夏になると、バスが燃えて炎上したりすることもちらほら発生しています。

さて、北京でバスに乗ったことのある方ならおわかりかと思いますが、ラッシュアワー時の乗車率は東京の地下鉄並みにギューギュー詰めになるのが一般的ですが、そうなるとギアボックスは当然のこと、ディーゼルエンジンへの負担も非常に大きいようで、排気ガスも一掃おおくなってしまいます。北京では1000路線程度の路線バスが運行されているとのことですが、これらのバスが全て排気ガスを放っているわけですから、北京市内の大気汚染にかなり大きな負担をかけていると言っても過言ではないでしょう。

タクシーはというと、現在大凡6万6000台程度のタクシーが北京市内を走っているとされています。殆どのタクシーは北京現代(ヒュンダイ自動車)のエラントラという車が使用されています。北京市政府は2017年末の自動車保有台数を600万台以内に抑えようと必死になってコントロールをしていますが、およそ北京の自動車の一割強がタクシーにあたる、という状況になります。

10年ほど前の北京では、古い旧式のバスや天津ダイハツで生産されていた初代シャレード(夏利)を用いたタクシーが相当数運行されていましたが、北京オリンピックの準備に本格的に入りかけた2004年以降、こうしたバスやタクシーは順次姿を消していき、新型のバスやタクシーに置き換わってきました。しかし急激な経済成長とモータリゼーションにより、環境インフラが追いつかないまま爆発的に自動車が増え続け、大気汚染の原因の大きな要因を引き起こしてしまいました。

北京市に実際に投入されているEVバス。ここ最近よくみるようになってきている(出典:中国汽車工業信息網)

北京市に実際に投入されているEVバス。ここ最近よくみるようになってきている(出典:中国汽車工業信息網)

こうした中、北京市は2012よりEVバスを投入を開始し、現在既に複数路線での運行を開始しています。一町中で見るEVバスは普通のバストあまり代わらないものの後尾部分にEVとかかれており、一目で分かるようになっています。般的なディーゼルエンジンの北京のバスは、轟音を響かせながら走っていくのが日常の光景なのですが、渋滞などで横に止まっていると、全く音がしないため、非常に静かで好感を持てます。

EVで一番問題なのは充電ステーションなどのインフラ問題ですが、こちらも現在北京市政府が必死になって普及に努めようとしているようです。タクシーでは、郊外を中心に既に数百台以上のEVタクシーを導入しているようです。昌平区や通州区、延慶県などで導入が進んでいるようで、特に通州区では北京市最大のEVタクシー専用充電ステーションが昨年オープンするなど、導入が盛んのようです。実際に、北京には現在約60箇所の充電ステーションがあるようですが、EVバスや清掃車、タクシーなどの公共車両向けに利用されているようで、自家用EVへの充電は許可されていないようで、自家用EV用の充電ステーションは、わずか4箇所しか整備されていない状態です。

北京市政府では今後新しく建設される団地などの駐車場へ、充電ステーションを併設するような制作を掲げている物の、都市部では、まだまだインフラ面での問題が多く、公共車両以外の自家用EVが普及するには、まだまだ時間がかかりそうです。