iOSバージョンの淘宝網アプリ画面。

iOSバージョンの淘宝網アプリ画面。かなりのユーザーがモバイルから購入している。

前回は「社区001」を取り上げてみましたが、中国のEC事情は数年前よりずいぶんと様相が変わってきました。中国のアリババやJD.COM(京東網上商城)の米国株式市場上場などで最近は日本のメディアでも注目されつつある中国のEC市場ですが、いまや日本以上の通販社会になっているように思います。

最近ではバスやタクシー、地下鉄の駅など、至る所であらゆる世代の人がスマートフォンを使い、あらゆるところでECを通じた購買を行っています。また、片手間でECショップを作るOLやサラリーマンも数多くおり、完全に一般市民の消費活動の根底に組み込まれた感があります。

一般的に、アリババ傘下の淘宝網(Taobao)や天猫網(Tmall)、JD.COM(京東網上商城)、一号店(yhd.com)、それに差が開いた形で亜馬遜(amazon.cn)などが、主に知られているECモールです。それら以外にも数多くのショッピングモールやショッピングサイトが立ち上げられていますが、上記のサイトで殆どの市場シェアを握っている状態です。

筆者は個人的にはそれぞれのサイトを使用しておりますが、各モールのかなり主観的な意見としての雑感は下記のようになります。

・淘宝網:とにかく何でもある。正規品からバッタ物まで、幅広く販売。
・天猫網:基本的に企業のみ登録可能なモールで、比較的安心できる。
・JD.COM:電機製品に強く、独自の物流網を完備で商品の変更も即対応。
・一号店:食品やオフィスサプライが充実しており、配達も速い。
・亜馬遜:中身や対応もバラバラだが、亜馬遜本体が取り扱う商品には掘り出し物も。

というものです。ただし、ブランド製品などを購入したいと思う場合、正直どれも良い選択肢とは言えないのが実情です。天猫網やJD.COM、一号店などはこの点を払拭しようとして努力していますが、正直出所がよく分からないものが多いのも実情です。

ゴールドの王冠マークが二個並ぶ、信用と販売量が非常に大きな淘宝網のテナントシール。

ゴールドの王冠マークが二個並ぶ、信用と販売量が非常に大きな淘宝網のテナントシール。

それもそのはずで、中国国内ではメーカー直販サイトというものそのものが非常に少なく、ブランドコピー商品も数多く流通しており、ECを通じた商品取引で多くのトラブルが発生しています。たとえばコンピューターの周辺機器(充電ケーブルなど)でもかなりの粗悪品が流通し、消費者が使用して事故が発生した場合など、粗悪品の周辺機器とは何の関係もないメーカーの責任が問われかけてしまうなど、様々な問題がでているのも実情です。

ではなぜメーカー直販サイトがこれほどまでに少ないのか、この理由は中国のインターネット制度と企業意識面、加えて流通面にも関連してきます。中国でウェブサイトを開設するには、当サイトでも以前から触れておりますが、ICPライセンスというライセンスを取得しなければなりません。一般的にICPライセンスと呼ばれる物には二種類存在しています。一つは非経営性ICP(ICP備案)、もう一つは経営性ICP(ICP証)というものです。一般的な企業がウェブサイトを開設して物販を行う場合、以前は経営性ICPが必要でした。これはウェブサイトを通して利益を上げる行為全てに対して必要なライセンスです。この規定が改訂されて、現在では自社商品を販売する場合のみ非経営性ICPの取得のみで可能、という見解に変更されています。

しかしながら、一般的にショッピングサイトを開設するとなると、専用の人員やサーバー、課金決済会社、加えて上記の行政手続きやそれらの毎年の更新(年検といいます)など、かなりの手間暇が必要です。加えて、中国企業の大部分は自社ブランドに対する概念が日本とは少し違うように思っています。日本であれば自社ブランドのデザイニングにおいては、絶対に引けない一線という物がありますが、中国ではまず金になる方法から、という概念が強いように思います。そのため、一般的には淘宝網等に出店して、その中で手っ取り早く商行為を行う、という形が最も好まれているのではないかと考えています。

淘宝網内の某ショップで販売されているジーンズ。EDWINの501と書かれているが。。。

淘宝網内の某ショップで販売されているジーンズ。EDWINの501と書かれているが。。。

しかしそれに伴う弊害も、上述の通りあるわけです。淘宝網などでは、顧客の評価を重視する姿勢もあることから、各店舗にハートマークや王冠マークなどをつけて、顧客の評価をわかりやすく表示していますが、だからといってその店舗が100%本物を売っているかというと、そういうわけではありません。価格相応の商品で配送などの対応が良ければ良い評価を獲得できるため、この点に関しては特段意味がない物となっています。

実際に、淘宝網で取り扱われている掘り出し物的な商品の中には、工場からの横流し品(輸出するには品質基準が達成していない物の中国国内なら流通しても大丈夫そうな品質の商品)や、あきらかに贋物とおもわれるもの、知的財産や著作権無視の物などなど、限りなく黒にちかい商品も多数販売されています。

関係当局も淘宝網もこうした動きに対処すべく行動はしていますが、しらみつぶしにしてしまうと淘宝網そのものが崩壊してしまうことになり、加えて数億点に上る商品を全て検閲するのも民間企業としては無理があるため、現状こうした動きに本格的に対処できる方法もなく、企業からの訴えに従って該当商品の削除を行うよう要請するしかないのが現状のようです。こうしたことにより、実際に日本のメーカーが損失を受けているケースも多々あるのが現状となっています。

中国語で「日本代購直郵(日本代理購入直送)」と淘宝網で入力した検索画面。トップは紙おむつが占めるが、様々な製品も下に続いていく。

中国語で「日本代購直郵(日本代理購入直送)」と淘宝網で入力した検索画面。トップは紙おむつが占めるが、様々な製品も下に続いていく。

最近で問題になっているのが、海外からの代理購入です。送料なども当然購買者が負担するのが一般的ですが、たとえば最近人気になっているのが日本の赤ちゃんむけ商品などを日本で代理購入する(日本代購)などが非常にはやっています。その他、アメリカや韓国、欧州など各地の代理購入が盛んになってきています。これはいわゆる個人輸入の枠で購入するのですが、中には贋物を掴まされるケースも多くあり、大きな問題になっています。

代理購入は、その名の通り、現地にいる人が中国にいる発注者の代わりに購入して、それを中国の発注者にEMSなどの国際郵便で届ける、という物ですが、当然ながらメーカー直ではなく、見知らぬ人を介在しているため、その分のリスクが高くなってしまいます。楽天やYahoo!ショッピング経由で購入される代理購入もあるようですが、いずれにせよ直接メーカーの保護などを受けられるわけではないため、様々な問題も指摘されつつあります。顕著な例としては、発注者は日本の製品を信頼して日本からの代理購入を選んだにもかかわらず、贋物や粗悪品を掴まされるケースがあることから、結果的に何の関係もないメーカーが、知的財産や自社ブランドに対する損害を受けるケースが多々生じてきています。

次回は、こうした事例にどのように対処するべきか、対策案を考えていきたいと思います。