中国においてメッセンジャーアプリといえばテンセント社の「QQ」が代表的な存在として長く君臨していました。現在においても、QQはプライベート、ビジネスを問わず、広く使われているメッセンジャーアプリの代表格的な存在です。QQは基本的にデスクトップ環境で使用されることを前提として開発されたICQベースのメッセンジャーアプリですが、スマートフォン向けにもアプリが公開されており、日本語版も発表されておりました。
これに対して、2011年に同じテンセント社がQQの発展型としてSNS機能を融合させたものが微信(WeChat)で、中国版と海外版とでアプリケーションが分かれています。中国版は微信、海外版はWeChatという名前を採用しており、海外版ではFacebookアカウントでの登録が可能、中国版ではQQアカウントでの登録が可能となっています。登録ユーザー数が8億人、アクティブユーザーが3億人程度ということで、非常に多くのユーザーを獲得しています。機能的には日本でも有名な「LINE」や「カカオトーク」とほぼ同じ機能が装備されており、音声やビデオ、グループチャットなどを取り扱うことができます。
中国では携帯電話ベースのコミュニケーションとしては、古くから短信(SMS)が普及してきました。その前はBBと呼ばれるページャー(ポケベル)でしたが、これらの感覚でSMSが普及し、中国の旧正月での新年挨拶メッセージは数百億通も送受信されていると言われています。
しかし、スマートフォンが普及しはじめ、さらに微信の登場後、これまでの携帯電話ベースのメッセージングのやりとりに大きな変化が現れ、現在では非常に多くの確率で中国のスマートフォンユーザーは、自身のスマートフォンに微信をインストールしているような状態です。そのため、自分の微信アカウントに登録している友人や家族とのやりとりは、殆どが微信ベースのコミュニケーションになっています。
微信では自身のアカウントをQRコードにする機能がデフォルトで備わっており、QRコードをそのままスマートフォンのカメラでスキャンすることで、簡単に自分のアカウントを共有することができます。この機能は非常に便利で、後述する「公衆号」の登録などでも広く使われています。このQRコードを名刺に印刷したり、いろいろな場面で使われるようになってきました。
グループチャット機能では、誰かが幹事役となって、たとえば気の合う仲間を登録したり、大学時代の同級生のグループを作ったり、または営業チームメンバーが全員を登録して連絡網に使ったり、お店の常連客を登録して意見を交わす、などといったような使い方をされています。
また一般企業は微信に対して、先述の「公衆号」と呼ばれるオフィシャルアカウントの申請を行うことができます。「公衆号」はグループチャットとは違い、登録ユーザー同士のコミュニケーションを行うことはできませんが、「公衆号」の中で自社のマーケティングや登録ユーザーに対する定期的な告知を行うことができます。
「公衆号」のアカウント情報は、上述の通りQRコードにすることがデキ、町中のデジタルサイネージや紙媒体の広告などでも「公衆号」が表示されており、気になるユーザーは手元のスマートフォンのカメラでスキャンし、自分のアカウントに登録しています。日本政府観光局や大手日系外食企業、また中国の日系フリーペーパー媒体なども「公衆号」取得して、定期的な情報配信を行っています。
このほかにも、微信には理財商品やEC、タクシー配車機能など、日常製品に非常に密着した機能を着実に充実させてきており、デジタル世代の日常生活のインフラに入り込もうとしています。そのためか、ある程度のアラート機能も備わっており、たとえばチャット画面にて友人とコミュニケーションをする場合、数字や金額やブランド名などを入力すると「銀行口座番号などを入力すると振込詐欺にあう可能性があります。気をつけて下さい」「詐欺に気をつけて下さい」などのメッセージがグレーアウトされた文字で表示されます。これはある程度メッセンジャーサーバーが検閲をしていることの証だと思われますが、おそらく過去にあったであろう被害を食い止めようとしているのではないかと思います。
中国在住の日本人も例外ではありませんが、中国在住の殆どの外国人はスマートフォンを利用しており、それぞれの言語バージョンで微信を使いこなしています。このほかに、最近では「LINE」ユーザーも徐々に伸びてきているようですが、上述の通り日常生活に密着したサービスは提供されていないため、中国国内においては微信ほどのアクティブユーザーを獲得するには至らないのではないかと考えられます。
現時点で既に様々なスマートフォンに対応しており、iOS、Android、WindowsPhone、BlackBerry等で利用することができます。またデスクトップ版も有り、デスクトップに表示されるQRコードをスマートフォンの微信でスキャンすることで、ログインできるようになっています。該当する端末をお持ちの方で興味のある方は、一度お試しされてみてはいかがでしょうか。
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